横笛の叶わぬ恋

滝口寺/京都府京都市

清盛が栄華を極めるその陰では…

建春門院の活躍もあって高倉天皇に嫁いだ清盛の娘、徳子に仕えていた横笛(よこぶえ)という女性の恋物語をひとつ。

清盛の子である重盛も30代半ばを過ぎて右大将にまで昇進し、六波羅小松第に邸宅を構えていたことから世間からは「小松殿」と呼ばれていた時分の話。
その重盛の家臣に斉藤時頼(さいとうときより)という若者がいました。13歳のころから宮廷の警護を務める滝口の武士の任にあたっていて、身長は180cmほどのイケメン。

ある日のこと、清盛が開いた宴の席で横笛は舞を踊るのですが、その姿を時頼が見てしまったことをきっかけに二人は急接近。そして恋に落ちてしまいます。
ところが時頼の父は二人の交際を認めてくれません。身分違いの恋で将来を棒に振るなと叱られてしまう時頼。

横笛のことは恋しいが、父親の教えに背くわけにもいかないと、時頼は葛藤し、悩み苦しみました。
そして19歳のときです、悩みぬいた揚句に出した結論はなんと出家。京都の西にある嵯峨野の往生院で修行の生活を始めてしまうのです。

滝口寺

往生院とは嵐山の北側、嵯峨の山裾にある祇王寺(ぎおうじ)のことで、その子院である三宝寺に時頼は籠っていました。
時頼は滝口入道と名乗っていたことから、三宝寺は滝口寺と呼ばれるようになります。

愕然としたのは横笛です。時頼は横笛に何も告げずに出家してしまったため会って恨みごとのひとつでも言いたい一心の横笛は必死になって時頼を探すのでした。手掛かりは「嵯峨の往生院」ということだけです。

訪ねてきた横笛

滝口寺

春風の吹く宵でした。どうにか往生院まで辿りついた横笛でしたが、いくつも建物があって、時頼がどの僧坊にいるのか見当もつきません。
やむなく当てもなく歩きまわっていましたが、ふと耳を澄ませば聞き覚えのある声の読経が……

滝口寺

この声は時頼に間違いないと確信した横笛は、お供の女性を介して訪問を伝えました。知らせを受けた時頼、驚きと胸騒ぎが合い混じる心地で扉越しにそっと横笛の姿を覗き見ます。
横笛の袖は涙で濡れ、顔はいくぶん痩せてしまっていて、その一瞥だけでも時頼の心は張り裂けんばかりでした。

滝口寺

しかし、僧房の者づてに横笛に伝えられた時頼の返事は「そんな人はここにはおりません。何かの間違いではありませんか?」というつれないもの。
横笛は恨めしく涙を流し、指の血で和歌を石に書き殴って帰っちゃいました。

山深み思ひ入りぬる柴の戸のまことの道に我を導け

今も歌碑が残るこの歌は「思い慕って山深くまで入ってきてしまいました。濡れた柴の門の先にある正しい道へ私を導いてください」という意味。

一方、時頼は横笛に住処を知られてしまっては、修行が気もそぞろになってしまうと密かに高野山へ移ってしまいました。そこは女人禁制の地。横笛は近づくことすらできません。こういうところ、時頼は徹底してます。

その後の横笛

時頼の行き先を知った横笛はショックのあまり同じように出家してしまいました。奈良の法華寺です。
横笛出家の知らせに、これで安心したのか時頼は和歌を送ります。

そるまでは恨みしかども梓弓まことの道に入るぞうれしき

剃髪して出家するまでは私を恨んでましたが、あなたも尼になって仏道に入ったことは嬉しいことです、と送ったところ、横笛から返歌が。

そるとても何か恨みん梓弓ひきとどむべき心ならねば

髪を剃って尼になっても何を恨むことがあるでしょうか。引きとどめることのできるようなあなたの決心ではないのですから、と詠っています。

その後、時頼を慕う気持ちがよほど強かったのか、ほどなくして横笛は死んでしまうのでした。
横笛の死を伝え聞いた時頼は、さらに仏道修行に専念してついには高野聖(こうやひじり)と呼ばれる高僧になるのです。

横笛と時頼の木像

滝口寺の本堂では鎌倉時代に彫られた、横笛(左)と時頼(右)の木像が並んで寄り添うように座っている姿を見ることができます。

また境内には平家の供養塔や、鎌倉幕府を倒した武将新田義貞(にったよしさだ)の首塚も残っています。

平家供養塔
  • 新田義貞の首塚
  • 新田義貞の首塚
  • 足利尊氏との戦いで討たれた新田義貞の首が、三条河原で晒しものにされていることを知った義貞の妻、勾当内侍(こうとうのないし)。首を盗み出して嵯峨野に埋葬し、本人も出家してこの地で暮らしたとされています。首塚のそばには勾当内侍の供養塔もあります



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  • 滝口寺
  • 住所 京都府京都市右京区嵯峨亀山町10-1
  • 電話 075-871-3929
  • 開門時間 9時~17時
  • 拝観料 大人300円、高校生以下200円、小学生以下50円
  • 交通 JR京都線、琵琶湖線、奈良線、嵯峨野線京都駅中央出口 市バス45分嵯峨釈迦堂前下車 徒歩20分
    京福電鉄(嵐電)嵐山駅 徒歩35分
    JR嵯峨野線嵯峨嵐山駅 徒歩40分


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